研磨視点で見る洗車
問題点:ポリッシャーを買って研磨してみたけど、陥没したウォータースポットだけが薄く残り満足できなかった。
結論:洗車傷を付けてでもウォータースポットを防止すべき
- 洗車傷がつくシーン
- ウォータースポットがつくシーン
- ユーザーとしてどうすべきか
洗車用品が急激に人気が出て、各メーカーさんが本当に良い商品をバンバン出してくれています。ユーザーとしては有難い限りです。カーシャンプーに始まり洗車用スポンジやクロス、純水器、筆みたいなディテーリングブラシ、バケツの底に敷く底上げ網、泡を吹き付ける電動蓄圧機等々、面白い商品が安価に手に入ります。
これらの商品たちが何を目的としているかを見ると、注意すべき点が見えてきます。
アルカリ性カーシャンプー:虫の死骸や鳥のフン、排気ガスに含まれる油分等の有機汚れを浮かせてくれます。これで引きずりによる洗車傷を軽減できます。
酸性カーシャンプー:ウォータースポットになるだいぶ手前の、乾燥状態では確認できない程度の水ジミを除去してくれます。これで、ミネラル分がまだら模様に定着するのを減らすことができます。
中性カーシャンプー:アルカリ、酸を使った浸け置きの後に洗車ミットやスポンジで洗う工程で使うため、滑りの良さや泡切れの早さが求められます。これで、引きずりによる洗車傷を軽減できます。
この液性を分けた洗い方は、京都ディテールの中谷さんによると、ラボコスメティカが発祥だそうです。
これらの液性を分けたカーシャンプーがあればOK!というわけではありません。これらを三つとも使ったとて、洗っている最中につく傷とスケール汚れしか対策できません。
次に水滴の拭きあげをしなければいけません。
乾拭きによる拭き傷
普通のタオルや安価なマイクロファイバークロスは生地そのものや縁の縫い目が硬く、それを手で持って拭くと一発で拭き傷が入ります。専用の拭き取りクロスを使う事で軽減できます。
一例として、神風コレクションのハヤブサというクロスを試しに買ってみて下さい。全くモノが違う事が、見た目からも感触からも分かります。
力をかけて拭くことでつく拭き傷
食卓を拭くような感じで手のひらで圧をかけて拭くと、傷が入ります。理想を言えば、クロスをピラッと置いて吸わせて剥がすのを繰り返すのが良いですが、屋外洗車でチンタラやっていると水滴が乾いて水ジミになり、それがウォータースポットに育っていきます。ここが洗車傷をつけてでもウォータースポットを防止すべきという結論の分かれ道です。
- 異物を巻き込んで洗うとつく洗車傷
- 圧力をかけて洗う事でつく洗車傷
- 乾拭きによってつく拭き傷
- 圧力をかけて拭く事でつく拭き傷
これらを極限まで減らそうを思うと
フォームガンで液性を分けたカーシャンプーを吹き付ける
高圧洗浄機で吹き飛ばす。専用のスポンジで優しく洗う
専用の拭きあげクロスで水気を取る
全行程で力を入れない繊細さや、なるべく拭かなくて良いように水滴を飛ばすブロア等々、道具の力を借りるしかありません。
お金がかかって仕方無い…。
環境や保管場所的にもマンション住まいだったらもう不可能なレベルです。
こうなってくると、車をキレイに保つために必要なものに優先順位をつけて対策していくしかありません。
タイトルの「研磨視点で見る洗車」の結論としては
洗車傷をつけてでもウォータースポットを防止すべき
という点に戻ります。
磨いてみると分かると思いますが、かなり深い洗車傷があったとしても陥没したウォータースポットはもっと奥深くまで行っています。洗車傷は全て磨きで消せていてツヤっとしているのに、ヒョウ柄のように凹んだものは残っている。
となると、最優先で対策すべきはウォータースポットだということになります。
「洗車傷はDIYでも案外なんとかなる」からです。
そう考えると、屋外洗車でウォータースポットを防止する際、何を差し置いても絶対必要な対策としては
「井戸水を使わない」という事。
井戸水にはウォータースポットの原因となるミネラルがたっぷり含まれています。
細かい話をするなぁと思われるかもしれません。僕もそう思ってました。でも、井戸水で洗った時の水ジミの付きやすさは実際にやってみると分かります。何かの競技でもやってるのか?と思われるくらい大急ぎで拭き取らないと、本当にすぐに水滴の形で染みになります。
水道水なら良いのかというと、これまた良くないんです。井戸水よりかなりマシではあるものの、原因となる成分を含んでいます。これを解決するには純水器が必要になるわけです。とはいえ、置き場の問題や予算、維持管理とハードルが高め。純水器無しの水道水でなんとか対策できないかと考えると…
「最初から最後までボディを冷やしながらやる」
という対策もあります。要は乾きにくくすれば良いわけです。イメージ的には、イオンデポジットを付かなくするというより、マシにすると言った方が適切かもしれません。
次に出来る事は、イオンデポジットが付きにくい成分のものを塗っておく事です。
イオンデポジット:水滴に含まれる不純物が、水だけ蒸発して取り残され定着し、ウォータースポットになる原因となるもの
イオンデポジットはガラスコーティング等の無機質の層がむき出し状態だと付きやすいという性質があります。当店では車磨きの講習をやっていて、練習用ボンネットにウォータースポットを再現することもあります。この時、ガラスコーティングを施工してから再現しないと
「頑固なウォータースポットを作れない」
んです。雨水だけでもなかなか作れません。
- ガラスコーティングだけを施工してある
- 水玉を残す
- ミネラル分を多く含んだ水をかける
これらを満たさないと再現できません。
であれば、対策はその逆をすれば良いわけです。
- ガラスコーティングの上にワックスを乗せておく
- 水玉を残さない
- 純水を使う
この中で、一番やりやすく効果の高い対策が、ワックスをのせておくという対策です。低予算でなるべくウォータースポットを作らない手順としては
- ボディを冷やしならが砂ぼこり等をホースガンのジェットモードとシャワーモードの中間に合わせて飛ばす
- バケツに濃いめに希釈したカーシャンプーを作り、洗車スポンジにたっぷり含ませ、その自重だけで汚れを押し流す
- 一旦冷やしがてら水量の多いシャワーモードで全体を流す
- 普通の希釈のカーシャンプーを作り、スポンジにたっぷり含ませ、2では落ちなかった汚れを少し加圧して洗う
- 冷やしながら水量の多いシャワーモードで洗剤を流しきる
- 拭きあげ専用の大判クロスで手早く窓全てを拭き、ルーフ、ボンネット、日の当たる方の側面という順番で拭いていく
- 濡らして絞った軟らかい拭きあげ専用クロスで細部の水滴を取る
- ワックスを施工
これなら、最低限
- 拭きあげ用の大判クロス
- 拭きあげ用の軟らかいクロス
- ワックス
- ホースガン
- 洗車用スポンジ
- 適当なカーシャンプー
があれば出来ます。
この場合、高圧洗浄機とフォームガンが無いので洗車傷のリスクを極限まで減らすことはできませんし、純水器が無いのでミネラル分の定着を無しにする事もできません。
なので
「完璧では無いけど合理的」
という手順になります。
ここから何を優先して機材を導入するか、あなたの洗車環境に合わせて考えれば良いのかなと思います。
もしかしたら、あなたに一番必要なものは洗車道具ではなく屋根かもしれません。
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当店では車磨き教室をやっています。今書いた内容は、洗車傷をつけてでもウォータースポットを対策すべきであるという内容です。
洗車傷の研磨程度なら1日の講習で誰でも習得できます。中古車を手に入れたけど、なんだか艶感が微妙とか、自分の車は新車から手入れしていてキレイだけど、家族の車をなんとかしてあげたいとか、磨きが必要になった方は是非講習を受けに来て下さい。
もし既にポリッシャーを持っているなら、それを持って来て頂ければ、それに特化した内容でお伝え出来ます。何も持っていないなら、当店の機材を使ってみて買うものを決めれば無駄がありません。
最後まで読んで頂けるなんて感激です!ありがとうございました。